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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)45号 判決

控訴人 破産者岡崎染工株式会社破産管財人 田辺照雄

被控訴人 京都府中京府税事務所長 今西功

右訴訟代理人弁護士 前堀政幸

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を取り消す。

本件を京都地方裁判所に差し戻す。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

一  控訴人の請求の趣旨、原因は、原判決の摘示と同一であるから、これを引用する。

二  控訴人の主張

租税債権が財団債権に該当する場合は、破産管財人が破産法上随時弁済すべき義務を負っているのであるから、結果として、交付要求は事実上催告の意味しか持たないことになるが、法的には右破産法に基づく義務に加え、交付要求により、国税徴収法上、破産管財人に優先弁済の義務を負わせるものである。

これが財団債権に該らない租税債権の場合は、破産法上随時弁済の義務がないのにかかわらず、交付要求により、破産管財人に優先弁済の義務を負わせ、その処分性はさらに明らかである。

原判決は、租税債権が財団債権に該る場合のみを想定し、事実上の結果に眩惑され、交付要求にかかる法令上の解釈を誤ったもので、取消を免れない。

二  被控訴人の主張

本件法人府民税については、控訴人がした予納申告によってその納税義務と納税額が確定しているものであって、原判決の法律の適用は正当である。

理由

一  当裁判所も、本件訴は不適法であって、却下は免れないと判断するものであって、その理由は、次のとおり付加するほか、原判決理由の説示(原判決四枚目表一〇行目から五枚目表七行目まで)と同一であるから、こゝにこれを引用する。

控訴人は、その主張の根拠として、財団債権に該らない租税債権について交付要求がなされた場合においても、破産管財人に優先弁済の義務を負わせると主張するが、租税債権が優先弁済権を有するか否かは租税関係法規の規定によって定まり、交付要求によって優先弁済権が生ずるものではなく、また、引用にかゝる原判決理由の説示のとおり、租税債権が財団債権に該当するか否かは、破産法四七条二号の規定によって定まるものであって、もし誤まって財団債権に該当しない租税債権について交付要求がなされても、これによって破産管財人は、随時弁済の義務を負うものではない。従って、本件交付要求にかゝる租税債権が財団債権に該当することについて争いがあるとしても、他の方法により救済を求めるのはともかく、取消訴訟によることは許されないといわなければならない。

二  よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、民事訴訟法三八四条、八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林定人 裁判官 惣脇春雄 山本博文)

〈以下省略〉

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